子供の頃から長年住み慣れた家ってのは、何年ぶりに帰ってみても、
直ぐに馴染んでしまう。つい昨日もここに居たような、そんな不思議な気分だ。
古びた玄関、狭い階段、昔自分の部屋にしていた和室は、
今じゃ弟に占領されているけど…。
時間は夜の11時過ぎ。周辺の家々は灯りがほとんど消えていて物音一つしない静けさ。
外出している人なども無く、希に人が立っていると、お互いビックリって感じ。
渋谷に長く住んでいると、真夜中でも、外が真っ暗になるなんてことは無い。
街灯やネオン、交差する車のライト、深夜まで起きている人も多いので、家々の明かりも殆どが点いている。
上を眺めると、空さえも街の明かりを反映してとても明るい。
24時間どの時間帯でも、外を人が歩いていないなんてシーンは想像も出来ない。
そんな日常に馴れていると、外に出て、真っ暗(そして静寂)という世界が、
逆に非日常的に思えて、とてもミステリアスで、新鮮に感じた。
子供の頃はそれが当たり前の世界だったのに…。
ミステリアスな世界は大好きなので、近くのコンビニに買い物がてら、散歩してみることにした。
こうやってここを歩き周るのは、十数年ぶりかもしれない。
空には満点の星。冬の星座オリオン座が見えた。
月の光が、周りを取り囲む森の木々に降り注いでいる。
木々の輪郭が、黒いシルエットになってくっきりと浮き上がって見える。
その奥には真っ暗な暗闇が見えた。(暗闇が見えるって表現は論理的じゃないかな?)
映画「ハリーポッターと秘密の部屋」の中に、"禁じられた森"っていう、
入ってはいけない恐ろしい森が出て来たと思うけど、
まさにそんなイメージが頭をよぎった。
そこには別世界の何かが在る。
そんな暗闇に、怖さよりも、なんだかワクワクする自分を感じる。
森といえば、昔観た低予算ホラー
「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」って映画も森がテーマだったけど、
結構怖かったな〜〜。
SFXなんてこれっぽっちも使ってない、僕でも撮れそうな映画なんだけど、
心理的に怖さのどん底に落とし込まれていく演出が、よく出来ていたと思う。
でもあの中に出てくるコワ〜イ森の中の風景は、なぜか郷愁を感じる風景で、
ちょっと好きだった。きっと子供の頃に遊んだ森の風景にとっても似ているんだろう。
それだけに感情移入もしやすくて、ラストの怖さも頂点だったけど…
今観たらどうなんだろう、結構コケちゃうんだろうか?
おっと脱線。
子供の頃良く遊んだ近くの公園は、
大人になって入ってみると、とても小さく感じた。
あの頃立っていた同じこの場所に、数十年経った今、立っているんだなって思うと、
とても不思議な気分だった。
ミニスキーで滑った丘の斜面も、やはり在った。
幾つかあった商店などは無くなっていたり、姿を変えていたり。
やはりここは変化のスピードがとてもスローだ。
数年、数十年ぶりに帰っても、とても落ち着けるのは、
やはり同じものがそこに在り続けるからなのだろう。
思えば、子供の頃の忘れていた記憶を目覚めさせてくれるのも、
この地以外にはありえないんだよな。
あの頃の風景がリアルにココにあるんだから。
そんな事を思いながら一人ほくそ笑む。
住宅街の静かな夜道を、キョロキョロしながら歩いていたので、
端から見るときっと怪しい人に映ったかも。
家に着き、小腹も空いたので台所をあさると、
懐かしの「マルちゃん 塩ラーメン」が出てきた。
かなり懐かしい。(T_T)
まだ在ったんだって感じ。
子供の頃はよく食べていたのだけど都内では見たことがない。
パッケージも昔のままだ。早速作って食べる。
そんな一日も終わり、
こたつにあたりながら一晩過ごした。
安心感と、その静けさも手伝ってか、久々にグッスリと熟睡することができた。