waxの日記

日常のひとコマ。見たこと、感じたこと、思ったこと…

パフューム −ある人殺しの物語-

渋谷のシネマGAGAで、
映画パフューム −ある人殺しの物語-を観た。

パフューム スタンダード・エディション [DVD]香水―ある人殺しの物語原作は、パトリック・ジュースキント「香水 ある人殺しの物語」

舞台は18世紀のパリ。
映画冒頭は、市場のシーンから始まるのだが、
クチコミの映画評にもあったようにかなりグロイ映像だった。
頭を殴られたような気分。
エッジの効いた映像表現の妙というやつか。
18世紀のパリが実際どんなところだったかは知らないけれど、
その頃の社会情勢や、文化、人間像みたいなものが、
その映像からドっと頭の中になだれ込んできてとてもリアルだった。
貧因層の劣悪極まりない労働環境やその生活が描かれる。
格差社会とはこんな世界を言うんだろう。
今の日本ではとても想像がつかない。


この映画のKEYは"香水(パフューム)"。
それだけに様々な香りが漂よってきそうな印象的シーンが度々出てくる。
映像から香りが出てくるはずはないのだけれど、
冒頭の市場のシーンでは魚臭さが、
印象的な黄色い果物(プラム)が出るシーンでは甘い香りが、
そして主人公が生涯忘れることができない"女性"が放つ仄かな香り。
この辺は観た人それぞれの主観になってしまうと思うけど。
ともかく様々な香りが漂ってくるような錯覚を覚えた。
鼻ではなくて、頭の中で感じるというのだろうか。


※実は鑑賞中、隣に座っていた男性が食べていた"スルメ"が臭っていて、何度となく現実に引き戻されそうになっていたのだけど。コレには参った…


さて、映画のストーリーを要約すると、
"グルヌイユ"という名の、超人的な臭覚を持った青年の一生を描いたお話。
彼はその特異な才能を発揮して、不遇な境遇から抜け出し、香水調合師の道へと進む。そして"究極の香水"を作るべく、驚くような行動にでる…といったところだろうか。


彼はまた、偶然自分自身に体臭が無いことに気づき愕然とする。
世の中に存在するあらゆる匂いを感じ取れる彼にとって、
匂いの無い存在とは無に等しく、この世に存在しないも同じ。
それはとても寂しいことだった。
"究極の香水"を作るということは、結局のところ、
自身のアイディンティティを確立するための行為だったのかもしれない。


映画のラストは、映画評などでも出ている通り、
とてもショッキングなシーンが準備されている。
正確には、2点(2シーン)の意味で。


なんとなくもの悲しく、美しくて、リアリティのある映画。
観た後に残ったものは、"究極の香水"についての興味だった。


人を惑わす程の力を持った「究極の香水」
昔から媚薬や惚れ薬についての話はごまんとあるけど、効果の程はいかがなものか。殆どは疑わしいものだろう。
最近 オキシトシン というホルモン物質が注目されていると耳にしたが、これなどはなかなか興味深い。今回の映画に繋がる話かもしれない。


香り(フェロモン的なモノも含め)と、人の"記憶"は、
実体験からしても、とても密接に繋がっているものだと感じる。
天気の良い日に、自転車で学校の側を走っていた時、フっとある花の香りがした。
とても昔、子供の頃、近所の庭か、公園だろうか。同じ香りを感じた記憶がある。
とても懐かしい香りだった。
香りを感じとった瞬間、その頃の情景や、感覚、感情までもが蘇ったように感じた。
きっと頭のなかに、そんな記憶のワンセットがインプットされているんだろう。
それが匂いというキーで扉が開かれて、記憶の表層へと浮かび上がってくるのだ。


匂いが記憶に影響を及ぼし、また記憶を呼び出せるのなら、
幸せなとき、悲しいとき、ドキドキした時、
いろんな感覚や感情の記憶一つ一つを匂いで引き出し、それをブレンドして、
ある答えを導くように仕立てることも可能な気がする。
究極の香水とは、そんなものなのかも…


世に出回っている香水の中で最も高価な香水とはどんなものなんだろう?
そう思ってネットで「世界一高価な香水」と検索してみたら、
ジャンパトゥ(Jean Patou)というデザイナーが1930年に発表した香水
ジョイ - JOYがそれらしい。


「香水の女王」とも呼ばれているらしいが、いったいどんな香りがするのだろう?
至福の香り?その香りを嗅いだとき、何かの記憶が蘇るだろうか?
(参考サイト)

10万円の香水って誰がつけるのでしょう。/香水の濃度で値段は変わる!


驚くほど大量な素材と多くの要素を凝縮して、やっと1滴の香水が絞り出される。
そうして苦労の末作り上げた香水も。その香りを一生保つことはできないのだ。
なんか儚いな。


パヒュームレジェンド―世界名香物語 香水(フレグランス)図鑑 (2006年度版) (Lady’s mook) 最新版 香水の教科書―愛されるための109のテキスト