waxの日記

日常のひとコマ。見たこと、感じたこと、思ったこと…

階段を上る足音

今朝、目が覚めて、
まだ少し眠気が残っている中、ベッドで横になりながら本を読んでいた。
少し読み進めたところで、フッと子供の頃の思い出が頭をよぎった。
たわいない記憶「階段を上る足音…」


中学生の頃、僕は実家の2階に部屋を持っていた。
実家は木造の一戸建て。玄関前の狭い階段を上ると、すぐそこに部屋はあって、
今と同じ6畳程度の部屋に、ベッドと、まだ読んでいない山積みの書籍があった。
自分の部屋とはいえ、ドアには鍵などなく、家族はいつでも入って来られた。
入る前にはノックして一声かけること!なんてルールも、守られた事は一度もない。

時には大人のコンテンツとやらを、コッソリ観たい時もあるのだけど、
そんな事もおかまいなしに、家族は突然ドアを開けてやって来ることもある。
そのせいか通路を歩く人の気配や、階段を上ってくる足音に、自然と耳をそばだてる癖がついてしまった。
人の気配がとても煩わしくて、早く一人暮らしでも始めたいと思っていた頃だ。


今では、コンクリートの壁に守られたワンルームに住み、隣の人の声も聞こえず、気配も気にすることなどない生活を長く続けている。それなりに快適な生活とも言えるのだけど、気がつけば、聞こえてくる音はいつも大通りを走る車の騒音ばかり。

思えばあの頃、2階のベッドで静かに横になると、いろんな音が聞こえていた。
台所で水を流したり、皿が擦れ合う音。お風呂場でザザーっと流れるお湯の音とか、
かすかにだけど空気に混じって聞こえていた気がする。そう、臭いもあったな。
そんな事はとても当たり前すぎて気にもならず、すっかり忘れてしまっていたけど…


今朝ベッドに横になって、本を読んでいたとき、
記憶の中で、昔の自分とシンクロナイズしたのかもしれない。
「階段を上る足音」。一瞬、耳に聞こえた気がした。
そしてふと、そんな人の気配がとても懐かしくて温かいものに感じた。